ドイツCDUメルツ首相の「Stadtbild」発言とは?AfDとの距離と政治の本音を読む/第884号

目次

コメントなど

記事に出てくる 「Stadtbild(シュタットビルト)」発言 と 「Brandmauer(ブランドマウアー)」政策は、ドイツの政治・社会的議論が背景にあるものです。

🏙️ 「Stadtbild(街の景観)」発言

現在のドイツでは、移民・難民問題が政治的に非常に敏感なテーマです。

CDUのフリードリヒ・メルツ首相は、ポツダムで記者から「AfDの支持が伸びている理由は何か?」と問われた際に、次のように答えています。

「我々は移民政策の過去の誤りを正している。しかし、街の景観(Stadtbild)にはまだ問題が見える。」

この発言がどう受けとめられたかというと

「移民が多い街並み(Stadtbild)を“問題”と呼んだ」

そう受け取られて、SPD、緑の党、左派などから「差別的・排外的発言」との強い批判が起きたのです。

批判者たちは

  • 「街の多様性を“問題”とするのは時代錯誤」
  • 「多文化社会を否定する」

もちろんのこと、メルツ側は「治安や統合の課題を指摘しただけで、差別の意図はない」と説明しています。

🔥 「Brandmauer(防火壁)」

政治的には比喩としての表現で、「極右政党AfDとの間に絶対的な一線を引く」というのがその意味です。

CDU/とCSUはずっと、「AfDとは一切協力しない」という立場を取っています。
これを「Brandmauer gegen die AfD(AfDに対する防火壁)」というわけです。

しかし、最近、特に旧東ドイツ地域でのAfDの勢いがすごいので、一部のCDU政治家から「地方レベルではAfDと協力すべきではないか?」という声が出ているのです。

つまり、「防火壁を壊すか?」という議論が党内で起こっていたのです。

これがメルツの今回の発言の背景です。

一方で、AfDの台頭は時流になっています。

メルツは「前政権の政策がAfDの台頭を招いた」と主張している。これにはメルケル政権も含めている。

「2021年以降のアンペル(SPD・緑の党・FDP)政権の政策」がAfDの支持を倍増させた。

今年1月に野党時代のCDU/CSU案(移民政策)がAfDの賛成で可決されています。

これについては、「正しいと思うことはAfDが賛成しようがしまいが関係ない」と説明。

果たして言葉通りなのか?個人的にはちょっと同意しがたい。
移民に関しては、日本はまだこれからさまざまな課題が湧き出てくることでしょう。

先行しているドイツの状況を知っておくことも何かの参考になると思います。
どんな批判が出ているかを以下にいくつか挙げておきます。

💬 「Stadtbild(街の景観)」発言と批判

政府の統合担当者ナタリー・パウリク(SPD):「移民を短絡的・ポピュリズム的に扱うと社会を分断する」。

ラインラント=プファルツ州首相アレクサンダー・シュヴァイツァー:「発言は非常に簡略化されすぎ」「多様な街こそ魅力的」。

左派・緑の党から強い批判と謝罪要求。
数十名の緑の党議員が公開書簡で「発言は人種差別的・差別的・侮辱的で、暴力を助長する」と非難。

NGO「Pro Asyl(亡命賛成)」のカール・コップ:「偏見に満ちた発言で極右を強化している」「発想が1970年代で止まっている」と批判。

ザクセン州首相ミヒャエル・クレチュマー(CDU):「問題は移民そのものではなく共通の価値の維持」だと説明。

個人的には、政治家は移民政策も政治の課題や道具として見ているように思います。

批判を浴びましたが、メルツのStadtbild発言は、本音だと思います。
その意味でAfDの主張に近いでしょう。

実際にAfD寄りの立場を取ると、これまた批判を浴びる。
だから、距離を置く、という発言を強いられる。

一方で、SPDやその他の党がいう移民受け入れ継続は、国民の賛同を得ていない部分が多い。
それこそがAfD躍進の背景にある。

人道支援が悪いという人は少ないでしょう。
しかし、支援する側にゆとりがないと簡単に支援するとは言えません。

また、支援される側も変わっていきます。
支援される権利を主張するようになると、人道支援が権利になったりビジネスになったりします。

「人道支援」という言葉から何をイメージするかは人によって違いがあるでしょう。違いがあるからこそ、その言葉の陰に潜むものは何かを考えてもよいと思うのです。

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前回出題分

メルツさんはAfD抑えに必死です

„Sie will uns vernichten“:
Merz will stärker auf Distanz zur AfD gehen und erklärt sie zum Hauptgegner der CDU

Der CDU-Chef verschärft seinen Ton gegenüber der AfD deutlich. Seine Offensive kommt, nachdem er Kritik für seine „Stadtbild“-Aussage einstecken musste und Parteikollegen die „Brandmauer“ infrage stellten.

tagesspiegel.de
http://enchan.net/xl/LXLNYA

わたしの訳

「彼らは我々を壊滅させるつもりだ」
メルツはAfDとの距離をより強く取り、CDUの敵中の敵だと宣言する

CDU党首は、AfDに対する口調を明らかにきつくする。彼が攻撃に出たきっかけは、自身の「街の景観」発言に対して批判を受けなければならず、また党友が「防火壁」に疑義を示したことにある。

*ワンポイント
infrage stellen

この用法を簡単に説明します。

🧩 基本構造

etwas infrage stellen
(=直訳すると「何かを問いに置く」)

「infrage」は一語ではなく、「in Frage」と分けて書くこともあります。
昔は分けて書くのが普通だったのですが、いまは新聞などだと「infrage stellen」と続けて書かれることが多いようです。

💡 意味

「〜を疑問視する」「〜に異議を唱える」「〜を見直す」
つまり、これまで当然とされてきたことを、「再検討する・批判的に見る」といった意味です。

🧠 例文

  • Er stellt die Entscheidung infrage.
     彼はその決定を疑問視している。
  • Niemand stellt die Demokratie infrage.
     誰も民主主義を疑っていない。

訳例

問題なさそうですね。

---引用---
“AfDはわれわれを破滅させようとしている” 
メルツ首相はAfDとさらに徹底して距離を置くといい、AfD はCDUの主要な敵であると言明する

CDU党首はAfDに対する論調を露骨に先鋭化させている。“都市の形発言”に対する批判を受け、党の同僚議員が “防火壁”に疑問を呈したあと、その攻勢が始まった。 
---終わり---
「露骨に」、「先鋭化」は良い選択だと感じました。

今日の記事

また移民の話だ・・・

Vor allem in die Türkei und nach Georgien
Zahl der Abschiebungen um ein Fünftel gestiegen

Von Januar bis September mussten 17.651 Menschen Deutschland verlassen, deutlich mehr als im Vorjahreszeitraum. Linken-Innenexpertin Clara Bünger kritisiert diese Entwicklung scharf.

spiegel.de
http://enchan.net/xl/CtARok

訳を送ってください。
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和訳投稿:
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投稿期限:2025年10月31日(金)
10月も終わる

あとがき

急激に気温が下がっています。
秋はあったのか?というくらい寒くなっています。

不作の庭の柿ですが
今日見たら、ほぼ姿形の無くなったのが一個とちょっとだけ突かれたのが一個。

それ以外は影も形も無くなっていました。とはいえ8個くらいしかありませんでしたが・・・。

無くなっている柿は、地面に落ちているわけでもなく、すっかり姿を消しています。

ヘタだけが枝に残っています。鳥くんたちがきれいに食べてくれたのかな?

それにしても、ちょっと前までは葉が生い茂っていたのですが、大半が落ちていたのを見て、秋の深まりを実感しました。

落ち葉の量が思ったより少ないのは、敷地の外にヒューッと飛んでいってしまったのか?ご近所迷惑かな?とちらっと思った次第。

残っていた一個ですが、収穫して渋抜き処置しました。

4−5日したら試食してみたいと思います。せっかくの旬のものですから。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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