ドイツ「63歳年金」廃止へ オーストリアとの比較で見えないもの/第929号

目次
45年間働いた人の減額なし年金は、守るべき権利なのか。 それとも、人手不足と年金財政を悪化させる早期退職の誘因なのでしょうか。
ドイツのメルツ首相は、45年間の保険加入後に減額なしで早期退職できる、通称「63歳年金」の廃止を年金改革の柱に据えています。
これに対し、左翼党党首イネス・シュヴェルトナーは、長年働いてきた人の権利を奪うものだと批判。年金がドイツより約50%高いオーストリアを参考にすべきだと主張しました。
しかし、オーストリアは年金保険料率が高く、社会保障財源の中で年金への配分を厚くしています。その一方で、医療費の患者直接負担割合はドイツより高くなっています。
年金額だけを比べて、オーストリアの制度が全面的に優れていると判断することはできません。今回は「63歳年金」の利用実態と、ドイツとオーストリアの年金制度の違いを見ていきます。
前回出題分
年金も緊縮財政の対象になっています。
„Schamlos“: Linken-Chefin will „Aufstand der Anständigen“ wegen Rentenplänen der Merz-Regierung
Nach 45 Jahren Arbeit ohne Abzüge in Rente gehen – dieses Recht soll bald Geschichte sein. Merz setzt die Reform durch, die SPD schwenkt ein – und die Opposition schlägt Alarm.
fr.de
http://enchan.net/xl/bz6d6V
わたしの訳
「恥知らず」:左翼党党首、メルツ政権の年金計画に「良識ある人々の蜂起」を求める
45年間働いた後、減額なしで年金生活に入る ― この権利は、まもなく過去のものになろうとしている。メルツ首相は改革を押し通し、SPDは同調する。そして野党は警鐘を鳴らす。
コメントなど
記事本文では、「63歳年金(Rente mit 63)」の廃止に焦点が当てられています。
「63歳年金(Rente mit 63)」とは、45年間の保険加入期間を満たした人が、通常の支給開始年齢より早く、減額なしで受給できる年金です。
ただし、「63歳年金」という通称が現在も使われているものの、実際に63歳から受給できるとは限りません。支給開始年齢は段階的に引き上げられています。
メルツ首相は、早期退職を促す制度の廃止を年金改革の柱としています。しかし、東部3州のCDU州首相と一部のSPD州首相は、45年間働いてきた人の権利を守るべきだとして反対しました。
しかし、SPD連邦議会会派代表のマティアス・ミールシュは、制度を廃止すれば年金財政を安定させる財源になるとして、メルツ首相の方針に同調。その一方で、肉体的負担の大きい職業については、移行措置や救済制度が必要だとしています。
左翼党党首イネス・シュヴェルトナーは、45年間働いた人は「救済を必要とする例外」ではなく、減額なしの年金を受け取る資格を得た人だと反論しています。
特に、建設、介護、小売業などで働く人については、70歳まで働き続けることは現実的ではないと主張しました。若いCDU政治家が社会保障費の大幅削減を要求する一方で、与党の一角を占めるSPDがそれに同調することも厳しく批判しています。
シュヴェルトナーが求めているのは、次のような改革です。
- 45年間の保険加入後に受け取れる減額なし年金の存続
- 年金削減ではなく給付額の引き上げ
- 年金水準を恒久的に最低53%に維持
- 連帯的最低年金の導入
- オーストリアの年金制度を参考にした改革
記事によると、オーストリアの年金水準はドイツより約50%高いといいます。オーストリアでは、ほぼすべての職業の人が共通の法定年金制度に加入していることが、ドイツとの大きな違いとして挙げられています。
今回の論争は、単に「何歳まで働くか」という問題ではありません。
年金財政を安定させるために給付を削減するのか、それとも年金保険に加入する人の範囲を広げ、負担を分かち合うのかという、年金制度の方向性そのものをめぐる対立になっています。
「63歳年金」は、制度の正式名称ではありません。
正式には、「特に長期間保険に加入した人のための老齢年金(Altersrente für besonders langjährig Versicherte)」と呼ばれます。
45年間の保険加入期間を満たせば、通常の年金支給開始年齢より早く、減額なしで受給できます。
制度が導入された当初は63歳から受給できたため「63歳年金」と呼ばれていますが、その後、受給開始年齢は段階的に引き上げられました。したがって、現在では「63歳から受け取れる年金」ではなくなっています。
「63歳年金」はどれくらい利用されているのか
ドイツ年金保険の2025年統計によると、新たに老齢年金を受け取り始めた人と、すでに受給している人の内訳は次のようになっています。
| 2025年 | 45年間加入後の減額なし年金 | 老齢年金全体 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 新規受給 | 26万2,361件 | 92万5,865件 | 約28.3% |
| 受給中 | 288万9,969件 | 1,908万7,911件 | 約15.1% |
現在受給されている老齢年金全体では、およそ7人に1人が「63歳年金」に該当します。
2025年に新たに老齢年金を受け取り始めた人に限ると、約3.5人に1人がこの制度を利用しています。
意外に多いですね。したがって、ごく一部の人だけを対象にした例外的な制度とはいえません。ベビーブーム世代が年金生活に入り始めたこともあり、年金財政や人手不足に与える影響が無視できない規模になっています。
45年間の加入期間が条件です。単に早く仕事を辞めたい人を優遇する制度ではなく、長期間にわたって働き、保険料を負担してきた人に認められた制度です。
このため、メルツ首相がいう「早期退職を促す誘因」と、シュヴェルトナーがいう「45年間働いて得た権利」のどちらから見るかによって、制度の評価が変わります。実は両者に大差はないかもしれません。
オーストリアの年金はなぜ高いのか
記事では、オーストリアの年金水準がドイツより約50%高いと紹介されています。
ただし、その理由を「ほぼすべての職業の人が同じ年金制度に加入しているから」とだけ説明するのは不十分です。
両国の主な違いを整理すると、次のようになります。
| 項目 | ドイツ | オーストリア |
|---|---|---|
| 主な加入者 | 主に会社員 | 会社員、自営業者、公務員など広い職業層 |
| 年金保険料率 | 18.6% | 22.8% |
| 年金権の積み上げ | 現役世代の平均賃金との比較をポイント化 | 毎年、所得の1.78%相当を年金権として記録 |
| 45年間加入した場合 | 標準年金水準は50%弱 | 計算上は約80% |
| 年金の支給 | 年12回 | 年14回 |
| 公費負担 | 多額の連邦補助金を投入 | ドイツ以上に大きな公費を投入 |
オーストリアでは、1年間加入するごとに所得の1.78%相当が年金権として積み上げられます。45年間加入すれば、
1.78%×45年=80.1%
となります。
もちろん、実際の受給額は所得、加入期間、退職年齢などによって変わります。それでも、制度そのものがドイツより高い給付を目指して設計されていることが分かります。
OECDが同一条件で行った将来推計でも、平均的な所得を得ながら就業期間を全うした人の手取り所得代替率は、次のようになっています。
| 国 | 手取り所得代替率 |
|---|---|
| オーストリア | 86.8% |
| ドイツ | 53.3% |
ここでいう所得代替率とは、現役時代の手取り所得に対して、退職後にどの程度の手取り年金を受け取れるかを示したものです。
この比較では、オーストリアはドイツより約63%高くなります。記事の「約50%」という数字は、平均受給額、総支給額、税引き前・税引き後など、何を比較するかによって変わる概数と考えた方がよいでしょう。
| 項目 | ドイツ | オーストリア |
|---|---|---|
| 平均的な年金給付 | 約50%高い※ | |
| 年金保険料率 | 18.6% | 22.8% |
| 医療費の患者直接負担割合 | 約11% | 約16% |
現役時代には、ドイツよりも多く年金保険を負担しています。
参考までに、社会保障給付全体で比較すると
| 2023年・GDP比 | ドイツ | オーストリア |
|---|---|---|
| 社会保障給付全体 | 28.7% | 29.7% |
| 年金 | 約12%台 | 14.4% |
| 年金以外 | 約16%台 | 約15%台 |
そんなに差がありません。年金額が多くなるように設計されているのがオーストリアの制度ということです。
代わりに例えば医療費などは個人負担がオーストリアの方が高かったりします。
年金だけを見て、オーストリアの方が恵まれているとは言い切れないのですね。
コメントはこちら
https://ssl.form-mailer.jp/fms/e6d8662885332
訳例
良いですね。
---引用---
“恥知らず” 左翼党党首はメルツ政権の年金改革計画に対し“まともな議員の抗議行動”を訴える
45年間働いて年金を減額されることなく年金生活に入る――この権利は間もなく過去の話になりそうだ。メルツ首相は年金改革を貫徹し、SPDは妥協する――そして野党は警鐘を鳴らす。
---終わり---
今日の記事
ザクセン・アンハルト州議会選挙前の最後の世論調査
AfD erreicht neuen Rekordwert – Mehr als ein Viertel noch unentschlossen
Es ist eine der letzten Umfragen vor der Landtagswahl in Sachsen-Anhalt: Im Politbarometer erreicht die AfD einen neuen Höchstwert, die Linke verliert spürbar.
welt.de
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訳を送ってください。
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911。もうあれから25年か・・・
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