メルツ首相、改革はどこへ――まだドイツのためにできること/第935号

目次
改革の首相として期待されたメルツさん。いまは支持を失い、党内でも厳しい評価にさらされています。
それでも、ドイツのためにまだできることはあるのでしょうか。
今回は、メルツ首相の言葉と政権運営を取り上げた論考を読み、改革が進まない理由と、残された可能性を整理します。ブログではさらに、ザクセン=アンハルト州の選挙後の動き、ドイツの税収の内訳、EUへの支持と規制への不満にも目を向けます。
前回出題分
メルツ首相は、どんな評価を歴史に残すのか・・・
Regierung
Wie der Kanzler Deutschland noch ökonomisch dienen kann
Seine Kanzlerschaft dürfte als großes Missverständnis in die Geschichtsbücher eingehen. Zu verlieren hat Friedrich Merz kaum noch etwas – aber es gäbe noch etwas zu gewinnen.
handelsblatt.com
http://enchan.net/xl/K3WYLM
わたしの訳
政府
首相がまだドイツ経済のためにできること
彼の首相としての歩みは、大きな思い違いとして歴史書に記されることになりそうだ。フリードリヒ・メルツには、もはや失うものはほとんどない――だが、まだ得られるものはあるだろう。
コメントなど
首相のメルツさん、人気がかなり落ち目です。
記事によると、世論調査ではCDUの支持率が20%を割り込み、党内でもメルツ支持が細っています。その苦境を感じさせる出来事が、ザクセン=アンハルト州の議会でありました。
州議会議長の選挙で、AfDの候補が、支持するAfDとBSWの議席数を合わせた数よりも4票多く獲得したのです。CDUからも票が流れたのではないかと疑われていますが、秘密投票なので確認はされていません。
メルツは、こうした候補を選ぶことは自党の価値観と相いれない、と批判しました。ところが、その後に、左派陣営が仕掛けた偽装工作だった可能性まで口にします。党をまとめたい気持ちは分かりますが、根拠の示されていない疑いを持ち出して、さらに波紋を広げてしまいました。
そもそもメルツは、Reformkanzler、つまり「改革の首相」として登場しました。経済に強い政治家として期待もされていたのです。
ところが、記事の評価は厳しいものです。
- 年金改革は、連立政権内の対立で足踏み。
- 介護保険改革は、大きな改革というより支出を抑える対策。
- 大規模な税制改革には、そもそも着手していない。
改革を掲げても、実現には仲間を説得し、合意をまとめる力が必要です。筆者は、メルツにはその点が足りないと見ています。強い言葉で方針を打ち出す一方、成果がなかなかついてこないのです。
国民への語りかけにも、厳しさが目立ちます。
「全体として、わが国の経済を支える労働の量は十分ではない」
こんなことを言ってしまう。改革で暮らしがどうなるのか不安な人には、「もっと働け」と責められているようにも聞こえるでしょう。
でも、違う顔もあります。
学校の生徒から「どうして政治家になったのか」と聞かれた時には、涙をこらえながら、こう答えています。
「私の世代と同じように、皆さんにも、開かれた自由な国で暮らす機会を持ってほしい。そのためです」
なかなかいいことを言っていますね。次の世代を思う気持ちはあるのでしょう。それが普段の言葉や政権運営では、うまく伝わっていないのかもしれません。
では、メルツにはまだ何ができるのでしょうか。
筆者が挙げるのは、改革の重点を絞ることです。老後保障に積立方式の柱を加えること、労働市場を少しずつ柔軟にすること、行政手続きや報告義務を減らすこと。まずはこうした課題を、協力者とともに実行していく道です。
大改革の首相として歴史に名を残せなくても、2029年の次の連邦議会選挙までに経済を持ち直させ、国を安定させる役割は残っている、というのが記事の結論です。
ただ、私が読んで気になったのは、メルツの後を引き受けようとする人がいない、というくだりでした。記事によれば、後継候補と目されるヴュストもゼーダーも、その座を望んでいません。
それほど今のドイツの舵取りは難しいのだと感じます。メルツ個人にも問題はあるでしょう。でも、この記事を読む限り、彼の周りにも、安心して後を任せられる政治家が見えてこない。首相一人の不人気だけでは済まないところに、状況の厳しさがあるように思います。
参照記事:Handelsblatt・メルツ首相がまだドイツ経済のためにできること
ところで、ザクセン=アンハルトの議会選挙のその後はどうなっていたかというと、まずAfDから州議会議長が選ばれました。州政府を率いる州首相は、10月17日時点ではまだ決まっておらず、12月に選挙を行う方向と報じられています。
参照記事:ZDF・州首相選をめぐる動き
新しい議会と、引き続き仕事をする旧政府
ここは、仕組みがちょっとおもしろいところです。
有権者が議員を選び、新しい議会が発足する。その最初の会合で、議会を運営する議長を選びます。一方、州首相を選ぶのは別の段階です。
その間も、新議会は新しい議席構成で審議や採決を進めます。政府を監視するのも、この新議会です。
では、政府はどうなるのでしょうか。州憲法では、新議会が初めて開かれた時点で、それまでの政府の正式な任期はいったん終わります。ただし、行政に空白ができないよう、州首相は後任が就任するまで職務を続ける義務があります。閣僚も州首相の要請で仕事を続けます。
つまり、「議会は新しい顔ぶれ、政府は前の顔ぶれ」という期間があるのです。旧政府が法律や予算を通そうとしても、新しい議会で必要な賛成を集めなければなりません。選挙で議会の力関係が変わっても、政府の交代は自動ではない。少し不思議ですが、議会の更新と行政の継続を両立させる仕組みなのですね。
BSWの「棄権」は、どちらの選挙?
10月6日の州議会議長選では、AfDのトビアス・ラウシュが、賛成48票、反対29票、棄権5票で選ばれました。
AfDは39議席、BSWは5議席。BSWはこの議長選ではAfD候補への支持を表明していました。それでも、両党の合計44議席より4票多かったのです。
CDUは棄権方針だったものの、15人いるCDU議員に対し、議会全体の棄権は5票だけ。党として足並みがそろわなかったことは分かります。ただし、秘密投票なので、余分な4票が誰から出たかは確定できません。
参照記事:州議会の選出結果、Tagesschauの解説
一方、「BSWは棄権する」と言われていたのは、州首相選についてでした。
州首相選では、最初の2回は全83議席の過半数、42票が必要です。しかし、3回目には棄権を除いた投票の過半数で選べます。全員出席してBSWの5人が棄権すれば、必要なのは40票。39議席のAfDは、ほかから1票得れば届く計算になります。
棄権は賛成ではありません。でも、反対票を投じる場合とは、当選に必要な票数が違ってくる。BSWの態度が注目される理由は、ここにありました。
参照記事:WDR・州首相選で棄権が持つ意味
ドイツの税収を支えているのは?
厳しいドイツの財政ですが、税収の割合はどうなっているのでしょうか。
2025年の連邦・州・自治体を合わせた税収を見ると、主な内訳は次のようになります。社会保険料は含めていません。
| 税目 | 税収全体に占める割合 |
|---|---|
| 付加価値税(輸入分を含む) | 約31.3% |
| 給与から源泉徴収する所得税 | 約26.5% |
| 営業税 | 約7.7% |
| 法人税 | 約4.0% |
法人税がかなり少ないので驚きました。付加価値税と並んで、働く人の所得にかかる税が大きな割合を占めています。しかも、この給与分とは別に、事業所得などに対する申告所得税もあります。
では、法人税はなぜこんなに少ないのでしょうか。
まず、企業の利益にかかる税が、すべて「法人税」に入るわけではありません。ドイツには自治体が課す営業税があります。また、会社の形によっては、利益を出資者に割り当て、個人の出資者に所得税を課す仕組みもあります。事業から生じた所得でも、税収統計では所得税に入る場合があるのです。
法人税の4%だけで、企業への課税全体を判断することはできません。
ちなみに日本では、財務省の2026年度予算の資料によると、国税と地方税を合わせた税収のうち、個人所得課税が30.2%、法人所得課税が25.5%。消費税と地方消費税は合わせて24.5%です。
日本の法人所得課税には、法人住民税や法人事業税なども含まれます。ドイツの法人税単独の4%とは集計範囲が違い、対象年や実績・予算の違いもあるので、そのまま比較はできません。ただ、日本では企業への所得課税が大きな柱になっていることが分かります。
参照:財務省・税収の内訳
ドイツの製造業が弱る影響も、法人税の減少だけでは済まないでしょう。仕事が減れば、働く人の所得や取引先の売上に響き、消費にも影響する。税収の内訳を見ていると、産業の不振は、そうした経路から財政全体に広がるのではないかと思います。
EUへの不満と、EUへの期待
さらに、ドイツの人たちはEUにどんなイメージを持っているのでしょうか。
私は、EUは口を出しすぎではないかと感じています。それだけに、調査結果は少し意外でした。
2026年5月公表のユーロバロメーターでは、ドイツの回答者の74%が「自国はEU加盟によって利益を得ている」と答えています。EUを安定の源と見る人も71%いました。
もちろん、加盟の利益を認めることと、EUの政策すべてに賛成することは別です。細かな規制には不満があっても、EUの一員でいる意味はあると考えているのでしょう。
実際、企業側には規制への不満があります。ドイツ商工会議所が約1,700社を対象に行った環境規制の調査では、約9割が、官僚的負担の削減や、安定した制度、国内・欧州で統一されたルールを求めています。
参照:DIHK環境バロメーター
それでもEUへの評価が高い理由を考えると、一つの手掛かりは安全保障への期待です。同じユーロバロメーターでは、ドイツの回答者の87%が、共通の防衛・安全保障政策を支持しています。
規制の煩わしさは感じても、不安定な国際情勢のなかでは欧州でまとまる必要がある。調査からは、そんな見方がうかがえます。
もう一つ気になるのは、ドイツ自身の対応です。商工会議所は、EUの指令を国内制度に取り込む際、ドイツが必要以上の規制を上乗せすることも批判しています。
EUに改善してほしい部分はある。でも、ドイツ国内で変えられる部分もある。メルツが掲げる行政手続きや報告義務の削減は、ブリュッセルへの批判だけでは実現しないのだと思います。
コメントはこちら: https://ssl.form-mailer.jp/fms/e6d8662885332
訳例
いいですね。
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政府
いかにして首相はドイツの経済になお貢献しうるか
メルツ氏が首相であることは、大いなる錯誤として歴史の教科書に残るだろう。フリートリヒ・メルツに、もはや失うものはない。だが、得られるものはなおありそうだ。
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今日の記事
EUの予算もなかなか決まらないみたい・・・
EU-Gipfel in Brüssel:
Mitgliedsstaaten sind sich bei EU-Haushalt nicht einig
Nach dem zweitägigen EU-Gipfel fehlen bei Themen wie dem Haushalt weiterhin Lösungen. Einig waren sich die EU-Staaten dafür bei dem Notfallplan für Migrationskrisen.
zeit.de
http://enchan.net/xl/j7AOTb
訳を送ってください。
(公開を望まない時は希望しないにチェック)
和訳投稿:
https://ssl.form-mailer.jp/fms/8408fcc494664
投稿期限:2026年10月23日(金)
10月も後半ですよ
最後までお読みいただきありがとうございました。
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